Twitterなどを見ていると定期的に見かけるのですが、
東京大学に学校推薦型選抜で合格→入学するも、中退(休学)して海外大学に進学
という人は今までに何人かいるようです。
こちらはルール上からするとグレーなやり方ではあるのですが、大学側があえて黙認しているんじゃないか、などの噂も一部では囁かれていたりもします(直接東大に問い合わせたりもしました)。
私自身も現役時代に東京大学の推薦入試を第一志望として受験し、不合格だったため今はマレーシアの大学にいます。そういった身としてはこういった人について色々思う所があるので、今回はそれについて書こうと思います。
本記事は特定の個人について言及しているものではありませんので、そこだけよろしくお願いいたします。
本記事の内容をまとめると、大体こんな感じです。
- ルール上はグレーなので、受験生に非はない
- 大学公式に見解を問い合わせたところ、返答なし(おそらく黙認?)
- ただ、個人的には東大推薦の性質も鑑みるとあまり良いことだとは言えないと思う
今回のテーマは推薦入試なので、東大に一般入試で合格→海外大学のルートについてはここでは議論しません。
また、何人かの方から「米大側から見て、他大学に一度入った人がこういったケースで入学するのはアウトの場合がある」との意見もいただきました。これは推薦入試に限らず一般入試で東大に入学した人に関しても当てはまると思います。
ただ、こちらに関しては私が詳しいことを知らない上に今回の主題から逸れるため、ここでは議論しません。

- https://x.com/vipertonguemom/status/1898523063882518587
- https://www.usnews.com/education/best-colleges/articles/what-a-gap-year-is-and-how-it-prepares-students-for-college


前提条件:志望校の順位
まずこの問題を語るにあたって、
東京大学に学校推薦型選抜で合格→入学するも、中退(休学)して海外名門大学に進学
といったタイプの志望校順位について確認してみましょう。
基本的には、
第一志望としてアメリカ等の名門大学(アイビーリーグなど)を受験し、一応東大も推薦で受けておく。どっちも受かった場合は東大を辞めるか休学して、秋から海外大学に行く。
という人がほとんどです。ですので、いわば彼らにとって東大推薦は第二、第三志望であると言えます。
本当は第一志望として推薦入試に出願したが、受験の真っ最中に気が変わって東大が第二、第三志望になったという例は少ないと思うので、ここでは議論しません。
ちなみに、私は第一志望が東大推薦で落ちたらマレーシアの大学を受験しようと考えていたため、このケースとは志望順位が違います。

ルール上ありなのか?
東京大学が出している要綱
2025年度の大学の募集要項を見てみましょう。
まずは4ページ。期待する学生像について。
何よりもまず大切なのは、上に述べたような本学の使命や教育理念への共感と、本学における学びに対する旺盛な興味や関心、そして、その学びを通じた人間的成長への強い意欲です。
8ページの推薦要件等。
○ 学部ごとに定める推薦要件(18~57ページ)に該当し、当該学部の学問分野に対する強い関心及びこれを本学で学ぶ積極的な意欲を持ち、学校長が責任をもって推薦できる者
○ 合格した場合、必ず入学することを確約できる者
ここからは、東京大学は以下の学生を求めていることが分かります。
- 東京大学での学びに興味関心を持っており、東京大学で積極的に学ぶ意欲のある学生
- 合格した場合、東京大学に入学を確約することのできる学生
ルール的にはグレー?
「東京大学で積極的に学ぶ意欲のある学生」について
まず、「東京大学での学びに興味関心をもっており、東京大学で積極的に学ぶ意欲のある学生」というもの。
これについては、最初から東大を第二・三志望で受験しているのであれば、「東京大学で積極的に学ぶ意欲のある学生」とは言い難いと思います。他の大学に受かったらそっちでいいや、と考えているわけなので。
ただ、第一志望でない場合は受験してはいけないとは書かれていないため、そこが争点になると思います。別に第二、第三志望だとしても同じくらい東大で勉強する熱意はあるかもしれませんし、この文面だと解釈の余地があります。
「東京大学に入学を確約することのできる学生」について
これに関しては要件を満たしています。
要綱には「卒業を目指す学生」などとは書かれておらず、「入学することを約束しろ」と書かれているだけです。卒業や在籍年数については記載がないため、規約上は問題なさそうです。
制度上の問題点まとめ
まとめると、「東京大学で積極的に学ぶ意欲のある学生」という文言については解釈の余地があるのでグレー。それを加味するとルール上は完全なアウトとは言えないということになります。
よって、問題点は
- 「東京大学で積極的に学ぶ意欲のある学生」という文言についての解釈
- マナー的な意味での是非
となります。
大学公式の見解
こんなことを個人が考えていても仕方がないので、大学にメールして直接聞いてみました。
東大に直接メールしてみた
問い合わせた内容を書きます。まとめるとこんな質問。
- 東大推薦合格→秋から海外大学、という選択肢はルール上ありなのか?
- そういった学生について、東京大学としてはどう思っているのか(やめてほしい、歓迎、など)?
- TOEFLやIELTS、SATのスコアも日本の大学としては珍しく推薦入試での提出を受け入れているが、これには海外大学との併願をする学生を取り込む意図やねらいはあるのか?
メールのやり取りを晒すのはあまり気が進まないので内容だけ書きますが、結論から言うと回答をはぐらかされました。
「主に募集要項に記載の通りですので、○○様に関してはどうかご理解をいただけますよう~」的な感じで、1~3の質問については一切回答してもらえませんでした。
ここから分かること
もし明確にダメならばダメと回答するはずなので、大学側としても黙認しているということなのではないかと思います。
あと、「TOEFLやIELTS、SATのスコアも日本の大学としては珍しく推薦入試での提出を受け入れているが、これには海外大学との併願をする学生を取り込む意図やねらいはあるのか?」という質問について補足でちょっと書きます。
東大推薦はTOEFLやIELTS、SATのスコアなどもアピールポイントとして受け入れている学部が多いのですが、これらは基本的に海外大学の受験で使うものです。
ですので、一部の東大生の間などでは「東大は海外大学との併願をしてもらい、優秀な学生を確保するためにあえてこういった資格を受け入れているのではないか」と言われています。
これも真偽は定かではありませんが、言われてみればそんな気がするので、やはり黙認といった感じなのかなと思ってしまいます。
これについて私が思うこと
ここからは、これについての私の意見を書いていこうと思います。まとめるとこんな感じ。
- 日本の研究に貢献する人材を逃すことにつながるので良くないことだとは思う
- 海外大学と東大を推薦で併願するなら第一志望にするべき
- ただ、制度上完全アウトとは言えないので、学生側に非はない
- また、合格したとしても、最低限他の受験生に対して思いやりの心は持つべき
まず、東大に推薦生として入学すると色々メリットがあります。
- 進学振り分けなしで希望の学部に行ける
- 大学入学時から後期の専門的な授業を履修できたりする
- メンターなどが付いて研究について助言をしてくれる
などなど。学部によって制度は異なったりするのですが、推薦入試の特典としてここまで研究を志す人が優遇されている大学は日本国内だと他にないと思います。ですので、一般入試で入学してから海外大学に行くのとは、わけが違うのです。
ここで、初めから海外大学に行くつもりなのに東大も推薦で受験してしまうと、結果として日本に残って研究者として頑張ろうとする人の機会を一枠奪ってしまうことに繋がるということはまず言えます。
東大推薦を受験するような人ならば後々活躍する可能性も高いと思うので、悪いと大学や国としては大きな損失なのではないかと思います。
それに、一応学校長の推薦をもって推薦入試を受けるわけですし、「本学(東京大学)での学ぶ意欲が旺盛な学生」を求めていると要綱に書かれているわけですから、できる限り第一志望として受けるべきなのではないかとも思います。
第二、第三志望だけど意欲はあるぞ!という人もいるかもしれませんが、推薦で入学した学生に与えられる恩恵を考えると第一志望の人のほうがふさわしいと思います。
つまり、ルール上はダメとは明記されていないけれど、東大推薦の性質も鑑みるとマナー的にあまり良いことだとは言えない、というのが私の意見です。
ちなみに、インターネット上(特にTwitter)における東大推薦についての情報は、ほとんどがデタラメな(受験したことがない人が勝手なイメージで色々語っているだけ)ものなので、真に受けないほうが良いです。
ただ、東大推薦で入学&中退(休学)→海外大学は制度上ダメとも言えない上、大学側も恐らく黙認していることなので、それを利用する学生側に非はないと思います。
特にアメリカなどの難関大学であれば全落ちすることも珍しくないため、海外大学受験と相性のいい東大推薦(課外活動などが求められる)を受けようと思うのは当然の思考でしょう。
ただ、そうはいっても一応他の不合格になった学生もいるわけですから、その人たちの分も海外大学に行くとしても頑張ろう、といった労いというか思いやりの気持ちは持つべきだと思います。
間違っても、「受験で負けたほうが悪いんだ」みたいな気持ちでいてはいけません。もちろんそういった人の中にそんなことを思っている人はいないでしょうが、一応。
終わりに
というわけで、東大推薦で入学&中退(休学)→海外大学はありなのかという件について色々考えてみました。
- ルール上はグレーなので、受験生に非はない
- 大学公式に見解を問い合わせたところ、返答なし(おそらく黙認?)
- ただ、個人的には東大推薦の性質も鑑みるとあまり良いことだとは言えないと思う
というのが今回のまとめです。
別に東大にどうしてほしいとか受験生にどうしてほしいとか、そういうのがあるわけではありません。ただこの問題について、少なくとも私はそう思ったというだけです。
もう一度言いますが、この記事は特定の個人に対して何か言及するものではありません。

