アメリカやイギリスなど英語圏の大学への留学がポピュラーな選択肢になってきているのに加えて、ここ最近で少しずつ知名度が上がってきているのがチェコやハンガリーの、ヨーロッパの大学の医学部。
ただ、外国の医学部って日本のものとどう違うの?などなど、気になることは多いと思います。そこで今回は、私が通うチェコ国立マサリク大学と日本の大学を項目ごとに徹底比較していきます!
この記事のライター:ぱんだ(インタビュー記事)
私立の中高一貫校出身です。留学経験はほぼありませんでしたが、海外に憧れる気持ちがいつの間にか私をチェコまで運んでくれていました。学生時代は自由奔放に生徒会活動に明け暮れる日々でした。
韓国ドラマを観るのが大好きでハマると一気見することもしばしば。私的ベスト韓ドラ オブザイヤー2023は「キング・ザ・ランド」です。
受験と進級率
先に要約しておくと、「入学」するのが難しいのが日本の医学部、「卒業」するのが難しいのがチェコの医学部だと思います。
日本の国立医学部に合格するのが難しいのは言わずもがなですが、私立だとしても合格するのは全国の受験生の上位6-7%という狭き門だと言われています。
それと比べるとチェコの医学部は受験時に必要とされる学力レベルは低いと思います。英語だけは日本の医学部と変わらないくらいですが、最大の特徴は数学の難易度の低さです。
マサリク大学では物理と数学を選択受験することができますし、数学のレベルは日本の医学部と比べるとかなり低いです。過去問を見ても数Ⅲの範囲はほとんど必要なく、数ⅠAⅡBも易しい問題が多い印象でした。難易度で言うと、青チャートのコンパス1~3程度のものほとんどで、たまに星4くらいの問題が出るかなと言う感じです。
他のチェコの大学では生物、化学、物理が必須科目で数学を選択すらできないこともあります。
私はマサリク大学の受験でも物理を選択したので、チェコの医学部受験において数学は1度も使っていません。
ここまでの話だとチェコの医学部って正直簡単なのかなぁと思ってしまうのも無理はありません。しかし、ここで問題になるのがチェコの大学の進級率…。
私が入学前に言われたのは「ストレートで進級して卒業するのが1/3、留年して卒業するのが1/3、退学になるのが1/3」。実際外国人も含めた学年全体で考えるとそのくらいだと思います。
ただし、日本人だけで考えるとストレート進級の割合がもう少し低くて留年率が高いかなという印象です。0年生のようなファウンデーションコースも合わせると平均して8-9年で卒業という生徒が多いと思います。
学費
留学するにおいて避けては通れない金銭面の問題。
日本だと、国立医学部の年間授業料 (2年次以降)が約53万円、私立の医学部になると大学にもよりますが平均すると約500万円ほどかかります。正直、「私立の医学部に行かせてほしい」と簡単に言える人は多くないのが現状だと思います…
それに対し、マサリク大学では入学する年度によって授業料が変わります。
残念なことに授業料は年々高くなっているのに加えてレートによってもかなり前後するのが苦しいところではありますが、私の学年(2020年入学)は年間約200万円を支払っています。(1チェココルナ=6.6円換算)
私が入学した時は1チェココルナ=約5.0円、つまり約150万円だったことを考えると、世界経済の状況にはかなり左右されていると言えると思います。
ただ、前のトピックでお話しした入学のしやすさを考えると悪くないコストパフォーマンスだとは思います。
医学部特有のカリキュラム
マサリク大学の最大の特徴は、1年次からがっつり医学系の勉強が始まることです。私がマサリク大学に興味を持った大きな理由の1つでもあります。
日本では、私立大学だと1年次から少しずつ医学系の科目がカリキュラムに組み込まれていることもあるようですが、国立大学の1年次は教養科目と呼ばれる医学系ではない科目を勉強します。
教養科目も長い目で見ればもちろん良い勉強にはなると思いますが、最大の問題点はモチベーションの低下。
実際、日本の医学部に通う高校の同級生と話すと「何の為に医学部に行ったかわからなくなる」「勉強するモチベーションが行方不明になる」という声を多く聞きました。
その点、マサリク大学では授業1週目から医療系の授業がしっかり始まります。
白衣を着て実際の骨などを見ながら受ける授業なのでモチベーションは必要とされる暗記量に圧倒されない限り、無くなることも行方不明になることもありません笑。
また、3年次以降の実習についてもチェコの大学はメリットが多いように感じます。
マサリク大学の附属病院では入院する際の契約書に「学生の教育にある程度協力すること」という項目があるようです。そのおかげもあって病院での実習には協力的な患者さんが多いように感じます。
また、医師や看護師の監督のもとであれば採血などの手技も学生のうちからたくさん経験することができます。
ちなみに、イタリアやスペインでは病院での授業はほとんど行われないようで、EU圏内からの交換留学生(通称Erasmus student)もこの点にメリットを感じてチェコの大学を選んで来る生徒は多いです。
チェコならではのカリキュラム
私が日本の大学のここが羨ましいなと思う点。それは教養科目での第2外国語の選択ができることです。
チェコの大学では病院での実習に備えて1年次から4年次までチェコ語の授業が必須科目になっています。マサリク大学は特にチェコ語教育に力を入れているようで、他の大学では2年次や3年次で終わる大学も多いのだとか。
もちろん生活上チェコ語は話せた方が良いですし、4年も勉強するとある程度理解できることも増えてきます。
しかしチェコ語はチェコでしか話されないので、コスパを考えるとドイツ語や中国語などのより話者の多い言語を勉強したかったなと思います。
在学中の実習
日本の大学にはあまり存在しないようなのですが、マサリク大学では夏季休暇中に2-3週間程度の病院での実習が必修科目として存在します。日本では学期中に大学附属の病院で行われているようです。
2・3年次の看護実習はチェコでできることが多いですし、もちろん自分の国で行うことも可能です。
4年次以降の実習についてはキャパシティの問題で英語コースの生徒はチェコでの実習が難しくなることと、自分の将来のことを考えてそれぞれの国で実習を行う生徒が増えてきます。この場合、エージェンシーがサポートしてくれる場合もありますが多くの場合は自分で病院とコンタクトを取る必要があり、少し大変です。
私の場合、地方出身で東京や大阪などの都市部の病院で実習をすることになった場合は宿泊費もかなりかかってしまうため、自分の住んでいるところから近い大学附属の病院で実習がある日本の医学生は少し羨ましいなと思います。
しかし、2-3週間も大学附属病院以外の病院を間近で見学できる機会はなかなか無いようでその点に関してはメリットの方が多いのかなとも思います。
卒業後の資格や進路
日本の大学では大学を卒業するための卒業試験とは別に国家試験があり、それに合格すると晴れて医者を名乗ることができます。
それに対し、チェコの大学では卒業試験が国家試験を兼ねているため、卒業と同時にEU圏内で使えるドクターの称号を得ることができます。
マサリク大学の卒業生は自分たちの国に戻ることが多いですが、チェコに残って医師として働いたり大学院に進学したりドイツなどの他のEU諸国で働く人も一定数います。
日本の大学を卒業した場合は医学部卒業見込みであることが国家試験の受験資格になりますが、チェコなどの海外の大学を卒業した場合は日本語能力試験などの追加の試験を受けなければならないこともあります。
マサリク大学は日本の厚生労働省が出している受験資格を得る大学の条件を満たしているのであまり大きな差はありませんが、そうでない大学はより多くの追加の試験を受けなければならないこともあるようです。
最後に
今日は計6つの観点からチェコの大学と日本の大学を比較してみました。
ここまでたくさんお話しして言うのもなんですが、「どっちの方が良い」と明言するのはかなり難しいです。
人によって重きを置いている点も違いますし、そもそも「日本から離れて暮らす」ということ自体を刺激として楽しめる人もいれば苦しいと感じる人もいます。
ただし、住んでみれば大抵のところは都になりますし、大切な友人たちに出会うことができます。
「不安」という感情だけがストッパーになっているのなら、思い切って飛び込んでみるときっと素敵な世界があなたを待っていると思いますよ!
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