マレーシアは他民族・多文化が共生している国で、様々な人種に寛容な国だと言われています。主にマレー系、中華系、インド系の民族がマレーシアで生活を送っています。特にアジア人が多いので、留学先での人種差別という意味では日本人にとっては安心かもしれません。
ここまで聞くと色々な民族が仲良く和気あいあいと生活しているように思いますが、留学している中で結構マレーシアでも人種差別的なものはあるんじゃないかと思っています。
そのため今回はマレーシアでの民族対立の事情について少し書いてみることにします。私だけでなく色々な人も言っていることではありますが、本記事で書かれている内容はあくまで私の周りの環境(サンウェイ・モナッシュ大学の周り)での話という点だけご留意ください。
日本人差別はある?
まず留学する身として一番気になる、日本人への差別はあるのでしょうか?
結論から言うと、ほとんどないと思います。マレーシアでは日本のアニメを好きだったりJ-POPを聞いている人が多いですし、経験上日本人だよと言って悪い印象を持たれることはあまりないです。
それどころか日本語をお金を払って勉強している人もまあまあいるくらいなので、私が大学に入学した時は日本人だというだけで周りに人が集まってきて、すぐに友達になれました。
差別というか、私や周りの日本人は、逆に日本出身であることで恩恵を受けているくらいなので、その点は心配しなくてもいいと思います。大学だけでなく観光地などに行っても同じような扱いを受けますし、少なくとも私は今まで人種としての扱いで嫌な思いをしたことはありません。
マレー系と中華系の対立
仲が良くない民族?
では冒頭で書いた人種差別とは何なのかというと、マレー系と中華系のマレーシア人の対立のことです。
マレーシアにはマレー系、中華系、インド系のマレーシア人がいて、それぞれ人口の7割、2割、1割を占めていると言われています。その中でも、私の学校は学費が高いからか、お金持ちの中華系マレーシア人がたくさんいて、マレー系マレーシア人の方は少ないです。
そして、そこで気づいたのがマレー系と中華系で仲良くしている光景をあまり見たことがない、ということです。マレー系の人はマレー系同士で固まっていますし、比較的陽気でクラスで人気者のマレー系でも、放課後などの自由時間では中華系とあまり関わろうとしません。
というより、正確には中華系もマレー系には積極的につるもうとしないと言ったほうが正しいかもしれません。
これは最初はなんとなく見た目が似ているもの同士、自然と本能的に仲良くしてしまうのかな?と思っていましたが(恐らくそれも多少はある)、文化的背景も絡んでいそうだということが分かりました。
ブミプトラ政策とその影響
詳しくはブミプトラ政策というものを調べてもらえば分かるのですが、どうもマレーシアでは過去にもマレー系と中華系の対立事件などはたびたび発生していたようで、お互いあまりいい印象を持っていないようなのです。
この国ではマレー系が優遇されるように政策が組まれており、マレー系マレーシア人は政府の援助を受けて比較的楽に生活ができたりするのだと、中華系の友達が言っていました。逆に中華系は行政関係の職には就きづらかったりと、マレーシア国籍を持った自国民なのに扱いに差があるようです。
そのため、中華系からしたらマレー系は少しずるいというか、もどかしい気持ちを無意識のうちに持ってしまっているのかもしれません。本人にはその自覚が無くても、親の教育なりで雰囲気的に潜在下にそういった意識が刷り込まれていることもあると思います。
実際に、見ていて「心の中ではあんまり仲良くしたくないと思っているんだろうな」という雰囲気がなんとなく学校生活でも伝わってきます。お互い決して言葉に出しての差別はしないので暗黙の了解みたいな感じにはなっていますが、そういう対立は存在していると思います。
また、これは他の大学の人から聞いた話なのですが、中華系の人たちと日本人だけでテーマパークに遊びに行こうと計画をしている時に、一人が「マレー系の子も誘っていい?」と聞いた途端にみんなの表情が変わって乗り気じゃなくなった、ということもあったそうです。
この問題について、若干センシティブではありますが中華系の友達に「どうして中華系の人にはお金持ちが多いんだい?」と話を聞くと「僕たちは怠惰なマレー系の人たちよりも真面目によく働いているから、当然だよ」と言っていました。
私の周りには特にレイシストはいないのですが、こういった感じで「マレー系と一緒にされたくない!」というような旨の発言は何度か耳にしたことがあります。
逆に、その関係か中華系の人はマレーシアに対して愛国心があるのかと言われると微妙な感じはします。マレー系の人はどう思っているのかは聞いたことが無いので分かりませんが。
どうしてブミプトラ政策が取られるようになったのかというと、昔に中国本土から渡ってきた中華系マレーシア人のご先祖様たちのパワーがものすごく、マレーシアの中での経済的な富裕層はみんな中華系だったからだそうです。その優位性に対抗してマレー系の人種を優遇しようと、こういった政策が取られたわけです。
その他の民族の対立
その他の民族(インド系と中華系の対立など)に対しては、実は私もよく分かっていません。先ほども言ったように、私の学校にはあまりインド系などの人はいないからです。
ただ大学の先生曰く、インド系は若干職務質問をされやすい、とのことです。警察官は基本的にマレー系の人種の方が多いのですが、インド系に対して信用していなかったりする側面は実際問題あるとその先生は言っていました。
日本人はそういう点で、パスポートの所持確認などをされることは少ないそうです。
そんな感じで、私の知らないところでまた違った民族対立や言葉に出ていない差別のようなものがあるのかもしれません。
終わりに
ここまで民族間の対立問題について私が経験したことを書いてみましたが、もちろんみんな口にはそんなこと出しませんし、人種差別をしたいわけではないのだと思います。
中華系でマレー系との対立的なことについて語っていた人も、「人間はみんな一緒だからね」と言っていましたし、本当にマレー系は嫌いだ、とは思っていないのだとは思います。
ただ、やはりどうしても政策がらみの優遇措置があったり、中華系がマレーシア内では一応マイノリティとのことで、多少なりとも心の中で何かしらの壁は感じているのではないでしょうか。
これはこちらに来て現地の様子を見るまで知らなかったことなので驚きました。いつかどの民族も完全に分け隔てなく接することができる社会が実現できるといいなとは思います。