先日マレーシアのLanguage Explorer Competitionという言語学オリンピックの大会の参加体験記を書きましたが、結果を見てみるとなんとBronze Award(上位10%)でした。
そして嬉しいことに、なんと成績優秀だったとのことでMalaysian Computational Linguistics Olympiad (MyCLO)と呼ばれる上位大会に招待していただきました。
海外で科学オリンピックに参加するのもなかなか貴重な体験だと思うので、今回はそんなMyCLOの参加体験記を書いてみます。
MyCLOって何?
そもそも言語学オリンピックとは、初見の言語を問題文から与えられたヒントをもとに解読する能力を競う科学オリンピックの一種です。
言語学オリンピックの概要についてはこちらの記事で解説していますので、良かったら読んでみてください!
MyCLOはそんな言語学オリンピックのマレーシア大会の一部で、具体的には
- Language Explorer Competitionの参加者のうち、成績優秀者がMyCLOに招待される
- さらにMyCLOの成績上位者が勉強合宿&APLO(アジア大会)に招待される
- APLOの参加者のうち上位4名がIOL(世界大会)にマレーシア代表として招待される
という流れとなっています。Language Explorer Competitionが国内予選、MyCLOが国内本選(二次選抜)と言った感じでしょうか。
つまり、今回のMyCLOで上位15名程度(友人からの情報)に入ると晴れてマレーシア代表としてアジア大会に出られるというわけです。
Language Explorer Competitionの参加者は450人程度で、MyCLOには80名程度が招待されました。こちらは毎年そうなのか、例年変動するのかは分かりません。
とりあえず予選の金~銅賞受賞者+数十名くらいはMyCLOに参加できるようです。
私は読み方が分からずMyCLOをマイシーエルオーと言っていましたが、マイクロが正式名称らしいです。
参加体験記
MyCLO招待まで
予選の結果発表が2月14日にあって、MyCLOの招待通知はその一週間後くらいの2月20日にメールで来ました。
メールにはこんな招待状と出欠確認リスト(Googleスプレッドシート)が添付されていて、参加したい人はシートに参加のチェックを入れてね~と書いてありました。
先述のように80人ちょっとが招待されたのですが、5人位欠席している人もいました。
場所はPPAS Daerah Gombakという公民館と言うか図書館のような場所だそうです。毎年そうなのかは知りません😇
問題は全部で5問、試験時間は3時間だそうです。予選は5問を1.5時間だったので、時間が倍になっていますね。
午後2時に集合して、そこから登録や簡単な説明をしてもらって、2時30分からスタートの予定でした。
対策方法
大会は3月9日にあるので、招待を受けてから三週間くらいの時間があったわけです。
マレーシア予選の参加体験記を見てもらえれば分かるのですが、マレーシア大会についてはノー勉で突撃したら銅賞が貰えてしまったため調子に乗っていました。
ただ、今回はもちろん(?)大事な大会なので対策を頑張ろうと思いました。
と思いましたが、めんどくさいっていうか忙しく過ぎてまたまたノー勉出場になってしまいました。ほんとバカ。
あと、問題は答えだけを書く短答式だと思っていたんですが、今回は記述らしくて見つけた言語規則とかは説明しなくちゃいけないらしいです。
しかも、そんな大事なことを前日に知りました。そんな英語の記述問題、前日に対策してできるわけねーだろ。
まあこれは公式からもアナウンスはなかったので仕方ないです。去年のIOL代表のマレーシア人の友達がいたので、ふと不安になって前日にその子に聞いたらそのイヤな予感が当たってしまいました。
なので、ここまでの言オリ歴で真面目に対策したのは日本大会(JOL)のみということになります。勉強方法が詳しく知りたい人は以下の記事を読んでみてください。
また、マレーシア大会に関してはいくつかの過去問が公式サイトで公開されています。
こちらのネットショップでも公式の過去問を入手できるので、それを利用してみるのもいいと思います。IOL代表の友達はこの過去問を使用していました。
会場到着!
服装は学校の制服(ない場合はフォーマルな恰好)で来いと招待状に書いてあったので、白いワイシャツ+ネクタイ+スラックスで行きました。
まあでもポロシャツなんかで来ている人もいたのであまり心配しなくていいと思います。
持ち物はこれらをリュックに入れていきました。
- 筆記用具:各自準備する
- パスポートなどの身分証明書
- スマホ, 財布など
- 水
- お弁当:ご飯は提供されないので各自で大会前に食べる
- iPad, ノート:直前の勉強用
- 上着:会場が寒い場合もあるため
- 時計:会場に時計はあるのでいらなかった
会場のPPASはKLの北の方にあり、公共交通機関でも行けなくはないですがめんどくさいのでGrabで行くことをおすすめします。KLの中心地からだと30分くらいで25RMくらいで行けます。
で、当然緊張していたのでいつもの確定演出でお腹を壊しました。そんなこんなで途中トイレに籠っていたので遅刻しかけましたが、なんとか集合時間には間に合いました。危ない危ない。
会場に入って見ると、選手は男子と女子は半々くらいの割合でした。男子は中華系マレーシア人、女子はマレー系マレーシア人が圧倒的に多かったです。
なんで性別と人種で参加の割合にバラつきがあるのか気になります。日本人は私しかいませんでした。
例の記事にも出てきたIOL代表の子は大会が始まるまでに過去問を使って対策を頑張っていました。去年のマレーシア代表が熱心に勉強しているのにノー勉の私には人権ないです、ハイ。
入場~試験終了まで
で、大会の会場に入ってみたらなんと驚き。こんな小さいイスについている机で問題を解くっぽい。
流石にちゃんとした机でやると思ってたし、左利きだから不利すぎる… ぶっちゃけ試験中も首とかが痛くなりました。
着席したら説明があって、まあ要点をまとめると
- 最初と終わりの15分は会場から出てトイレとかは行けないよ
- 早く終わったら終了時間よりも先に回答用紙を提出してもいいよ
- シャーペンでもボールペンでもいいけど、見やすいからボールペンをおすすめするよ
- 水と筆記用具以外はカバンにしまって前に置いてね
みたいなことを言われました。そんなこんなでイスにイライラしながら試験開始。
最初の1~4問は自信こそないものの初めの2時間で解けました。このままのペースで問5も解ければマレーシア代表も夢じゃない。しかも問5は私の得意な見知らぬ単語とそれに対応する英語訳を見つける問題で大チャンス。
と思ったら、残りの1時間を全部使っても問5が全然解けませんでした。形態素解析したり頻度を数えてみても、どうしても説明に矛盾が生じてしまいました。
時間がヤバかったので勘で全部記号だけ埋めてタイムアップ。多分第5問は簡単な問題だと思うので、ここが解けないのは痛手で、1~4問目も正解している保証はありません。途中であきらめて見直ししてればよかった。
そんなこんなで、あまり手ごたえは良くなかったです。IOL代表経験者の友達は5番は解けたけど2番が分からなかったと言っていました。あとは結果を待つのみ。
途中でロシア語とかの問題が出てきました。
昔のJOLもそうですが、こういう趣味で勉強している人がいそうな言語はあんまり出題しないで欲しいですね…
それぞれの大問は1~3問の小問で構成されています。それぞれの配点は公開されていないため、全部同じ配点なのか得点構成にバラつきがあるのかは分かりません。
また、大問5問中2問が説明不要の短答式、それ以外の問題は答えを説明が求められる記述式でした。
問題文に説明が必要なのか否かは明記されているので安心です。
英語での記述対策ってどうしたらいいの?
記述の方法
せっかくなので有益なことも書きたいので、英語での記述対策について書こうと思います。
具体的に言語規則を説明すると言っても色々なやり方があります。
- 見つけた言語の規則を淡々と書く
- 規則を説明する表を書く
- 自分は○○だと考えたのでこういう答えになった~という解答過程を説明する
といいつつ、記述の仕方は公式から説明されているわけではないので、こちらのIOL等の英語での過去問&模範解答やネットショップで入手できる過去問を参照したりしてテキトーに書けばいいんじゃないでしょうか。
日本語ではありますが、JOL公式の過去問の解答なんかも参考になると思います。
私も確実なことは言えないので、APLOとかIOL参加者(日本語ですが)をTwitterなんかで見つけて聞いてみるのもいいと思います。
知っておくと便利な用語
IOLなどでは日本語で回答できるので大丈夫ですが、もし今回のように英語で記述を迫られた場合はこんなものを押さえておくといいんじゃないでしょうか。
- 平叙文:declarative sentence
- 肯定文:affirmative sentence
- 否定文:negative sentence
- 疑問文:interrogative (question) sentence
- 単数形:singular (form)
- 複数形:plural form
- 現在形:present tense
- 過去形:past tense
- 未来系:future tense
- 進行形:progressive tense
- 文法:grammar
- 語幹:root
- 音節:syllable
- 音素:phoneme
- アクセント:accent
- イントネーション:intonation
- なまり:dialect
- 統語論:syntax
- 主語:subject
- 目的語:object
- 名詞:noun
- 動詞:verb
- 形容詞(形容動詞):adjective (verb)
- 代名詞:pronoun
- 所有:possession
あとがき
というわけで、あまり自信はありませんが無事にMyCLOへの参加を終えることができました。頭の良さそうな選手と交流もできましたし、留学のとてもいい思い出になりました。
特にファウンデーションコースに在籍中のマレーシア留学生はぜひ出場してみてはいかがでしょうか。
余談ですが、先述の同じ大学のIOLの国代表の人に聞いてみると、マレーシアでは地理オリンピックや地学オリンピックなんかの科学オリンピックも開催されているそうです。
ですが、深刻な予算不足のために言語学オリンピックと物理オリンピック以外は自費で国際大会に参加しなくてはいけないとかなんとか(人口の違いなどではなく予算の問題でIOLも4人しか派遣できない。日本は8人)。こういった状況もだんだん改善されていくといいですね